田中貴金属工業、中国で燃料電池用電極触媒を生産へ

——中国の成都光明白特貴金属有限公司と技術支援契約を締結し、急成長する中国の燃料電池市場のカーボンニュートラル化に貢献します。

田中貴金属グループの中核会社であり、工業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:田中耕一郎)は、このたび、中国現地法人成都光明白特貴金属有限公司と電極触媒製造技術の技術支援契約を締結。

成都光明白特貴金属有限公司の子会社である雅安光明白特貴金属有限公司(2024年夏正式操業予定)は工場内に生産設備を設置し、燃料の生産を開始します。田中貴金属工業は、燃料電池用電極触媒の世界市場で高いシェアを誇っています。田中貴金属グループは、今回の提携により、中国における燃料電池用電極触媒の需要拡大に対応してまいります。

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^田中貴金属工業の燃料電池用電極触媒について

現在、田中貴金属工業株式会社湘南工場内のFC触媒開発センターでは、固体高分子型燃料電池(PEFC)および固体高分子型水電解(PEWE)用の電極触媒の開発・製造と、PEFC用カソード(※1)材料の販売を行っています。高い活性と耐久性を備えた白金触媒および白金合金触媒、アノード用一酸化炭素(CO)被毒耐性に優れた白金合金触媒(※2)、OER触媒(※3)、PEWE用陽極酸化イリジウム触媒。

PEFCは現在、燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池「エネファーム」などに採用されている。将来的には、バスやトラックなどの商用車、フォークリフトなどの貨物トラック、建設重機、ロボットなどの産業機械、大型機器などへの採用範囲の拡大が見込まれます。PEFCは水素と酸素の化学反応を利用し、小型・軽量で高出力が得られます。これからの地球環境にとって非常に重要な発電装置です。

燃料電池の本格的な普及が直面する主な問題は、プラチナの使用コストです。田中貴金属工業では、40年以上にわたり貴金属触媒の研究に取り組み、貴金属の使用量を削減しながら高性能・高耐久性を実現できる触媒を開発してきました。現在、田中貴金属工業では、新たな担体材料の研究や触媒の後処理方法の研究、より活性な金属種の開発などにより、燃料電池に適した触媒の開発を進めています。

世界の燃料電池市場動向

中国は政府政策の指導のもと、戦略産業として水素エネルギーとFCVの開発を推進し続けている。中国政府は燃料電池技術の研究・開発・普及を促進するため、燃料電池車の開発・導入を促進するための補助金や税制優遇政策など、さまざまな支援政策を打ち出している。さらに、中国政府は都市や主要交通路に水素エネルギー供給インフラを構築する。今後、燃料電池市場はさらに発展していきます。

欧米でもゼロエミッション車(※4)の推進が進んでいます。2023年4月に欧州連合が採択した気候変動に対処するための政策パッケージ「Fit for 55」において、法案が可決された。2035年以降、新車の乗用車や小型商用車は原則ゼロエミッション達成(化学合成燃料を使用する場合に限る)。「e-fuel」(※5)の場合、内燃機関を搭載した新車は引き続きゼロエミッションが認められる。 2035年以降に販売)。米国も2021年に大統領令を発令し、2030年までに新車販売の50%を電気自動車が占めるという目標の達成を目指している。

経済産業省は2022年9月からモビリティ分野での水素エネルギーの普及促進に向け、水素エネルギー供給事業者、自動車メーカー、物流事業者、地方自治体などと協議する。2023年7月の中間まとめによると、燃料電池トラック・バスの普及促進に向けた「重点分野」を年内にもできるだけ早く選定することが示されている。

田中貴金属工業では、今後も燃料電池用電極触媒の安定供給に努め、研究開発に注力してまいります。当社は、燃料電池用電極触媒の著名企業として、今後も燃料電池の普及と水素エネルギー社会の実現に貢献してまいります。

(※1) カソード:酸素の還元反応が起こる水素発生極(空気極)を指します。水電気分解(PEWE)を使用すると水素発生極となります。

(※2)アノード:水素の酸化反応が起こる酸素発生電極(燃料極)を指します。水電気分解(PEWE)を使用すると水素発生極となります。

(※3)OER触媒:酸素発生反応(Oxygen Evolution Reaction)を活性化する触媒。

(※4)ゼロエミッション車:電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など、走行時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない自動車のこと。英語では「ゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)」と表現されることが多い。米国では、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)はゼロエミッション車とも呼ばれます。

(※5)e-fuel:二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を化学反応させて生成する石油代替燃料。

■田中貴金属グループについて

田中貴金属グループは、1885年(明治18年)の創業以来、貴金属を中心に幅広い事業を展開してまいりました。当社は国内において非常に多くの貴金属の取引量を誇り、工業用貴金属製品の製造・販売、宝石・宝飾品・資産としての貴金属製品の提供に長年にわたり努力を惜しみません。また、貴金属に関するエキスパート集団として、国内外のグループ会社が製造・販売・技術を一体となって連携し、製品・サービスを提供しています。2022年(2023年3月時点)のグループ総売上高は6,800億円、従業員数は5,355名となる。

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投稿日時: 2023 年 11 月 13 日